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ピロリ菌の検査と治療– H.pylori –

目次

ピロリ菌とは?

ピロリ菌は胃の中で生息する細菌で,胃十二指腸潰瘍や胃がんの原因です.
胃酸は強酸ですので胃の中ではほとんどの菌は生息できませんが, ピロリ菌はアルカリ性であるアンモニアを作り胃酸を中和することにより胃内で生息することが可能です.

このとき産生されるアンモニアが胃粘膜を傷つけて慢性胃炎を引き起こし,放置しておくと胃潰瘍や十二指腸潰瘍になることが分かっています.ピロリ菌を除菌することにより胃炎が改善し,胃十二指腸潰瘍の再発率が著明に低下します.

また一方でピロリ菌が胃がんの原因であることも分かっており,ピロリ菌に感染している人は未感染者と比べて20倍以上胃がんになりやすいことも分かっています.ピロリ菌を除菌すると胃がん発生率が約1/3に下がりますので,ピロリ菌の除菌治療は胃がんの予防にも有効です.

以上のような理由から,本来であればピロリ菌に感染している方全員が除菌治療の対象となるべきですが,現時点ではバリウム検査か胃カメラで胃十二指腸潰瘍の診断を受けた方,もしくは胃カメラで胃炎の診断を受けた方のみ除菌治療の保険適用が認められています.

ピロリ菌が引き起こす病気

  • 胃・十二指腸炎
  • 胃・十二指腸潰瘍
  • 胃MALTリンパ腫
  • 機能性胃腸症
  • 胃ポリープ
  • 胃がん
  • 特発性血小板減少性紫斑病 など

胃粘膜にピロリ菌が感染している場合,胃や十二指腸に慢性の炎症が起こりやすくなります.
炎症が持続し粘膜のダメージが深くなると潰瘍を生じます.炎症や潰瘍は胃薬を服用することで改善しますが,ピロリ菌がいる限り再発しやすく,粘膜のダメージが重なっていきます.胃炎が進行して胃粘膜が萎縮してしまうと胃がんになりやすくなります.
除菌治療によってピロリ菌を除去すると炎症や潰瘍の再発が起こりにくくなり胃がんリスクも下がります.
胃炎や潰瘍を再発させないために,また胃がん予防のために当院では除菌治療をおすすめしています.

ピロリ菌と胃がん

世界各国で胃がんの研究が進み,ピロリ菌の感染が胃がん発生に深く関わっていることや,除菌治療が胃がん予防に一定の効果を持つことがわかってきています.ただし除菌治療に成功しても胃がんを発症する可能性はゼロにはなりません.そのためピロリ菌の除菌治療に成功した後も,定期的に胃カメラ検査を受けて早期発見に努めることが重要です.胃がんは早期発見できれば内視鏡で切除可能で,根治も十分期待できる病気です.除菌治療と定期的な内視鏡検査を受けることで胃がんのリスクを下げて健康な生活を送りましょう.

ピロリ菌の検査方法

・胃カメラ時に胃粘膜を採取して調べる方法(迅速ウレアーゼ試験)
・血液もしくは尿検査(抗体検査)
・尿素呼気試験
・便検査(抗原検査)

各検査には一長一短がありますので,診察時に最適な方法をお勧めしています.
上記のうち迅速ウレアーゼ試験と尿素呼気試験は院内で検査を実施しておりますので,即日結果をご説明することが可能です(尿素呼気試験は予約検査になります).

ピロリ菌の除菌治療

1種類の『胃酸の分泌を抑える薬』+2種類の『抗生物質』を内服します(一次除菌.1日2回,7日間)
内服終了後,2カ月以上経過してから,除菌できたか確認の検査(尿素呼気試験)を行います.

【除菌療法の成功率】
薬の飲み忘れなどがなければ,初回の除菌治療(一次除菌)の成功率は90%以上と言われています.
一次除菌治療でピロリ菌が除菌できなかった場合は,抗生物質を一部変更して再度除菌治療を行います(二次除菌).
二次除菌治療の成功率は98%程度ですので,ほとんどの方は一次除菌か二次除菌のどちらかで除菌が成功します.

【除菌薬の副作用】
・味覚異常:口の中が苦い感じが続きますが,内服終了後に速やかに改善します
・軟便〜下痢:激しい下痢にならないように整腸剤を併用していただきます
・全身薬疹:まれに薬に対するアレルギーで全身に痒みを伴う発疹が出ることがあります

【除菌治療の注意点】
自己判断で服用を中止せず,処方された薬は最後まで服用してください
ただし薬の副作用と考えられる全身の発疹や,腹痛・発熱・出血などを伴う下痢が出現した場合は速やかに服用を中止してください
除菌薬服用中は,禁煙・禁酒を守ってください.
(喫煙により除菌成功率が下がり,飲酒により急性アルコール中毒症状が出ることがあるため)

当院では外来でピロリ菌チェックおよび除菌治療を実施しています.
ピロリ菌の検査・治療を希望される方は安心してご相談ください.

ピロリ菌の除菌治療の保険適応について

この検査を保険適応で行うためには1年以内に胃内視鏡検査を行っており,胃炎等の診断を受けている必要があります.
詳しい条件は以下の5つになります.

  1. 内視鏡検査または造影検査(胃バリウム検査)で胃潰瘍,もしくは十二指腸潰瘍と診断された場合
  2. 胃MALTリンパ腫
  3. 特発性血小板減少性紫斑病
  4. 早期胃がんに対する内視鏡的治療後
  5. 内視鏡で胃炎と診断された場合

ピロリ菌の除菌治療に関するよくあるご質問

なぜピロリ菌に感染するのですか?

原因はよく分かっていませんが,乳幼児期にピロリ菌を飲み込むことで感染すると考えられています.
以前は井戸水などを飲んで感染することが多かったようですが,最近は両親や祖父母などからの経口感染が原因と考えられています.

ピロリ菌を放置するとどうなりますか?

ピロリ菌感染初期は胃粘膜の炎症が起こり慢性胃炎になります.
慢性胃炎が進行すると萎縮性胃炎の状態になり,胃粘膜細胞のDNAにも傷がついて治らなくなります.
この状態になると胃潰瘍や十二指腸潰瘍,胃がん発生率が高くなります.

ピロリ菌の治療中に飲酒や喫煙はしてもいいですか?

いいえ.
アルコールは肝臓で分解されますが,除菌薬内服中は肝臓に相応の負担がかかりますので,アルコールの分解が妨げられアルコール中毒になりやすくなります.
またニコチンにより末梢血管が収縮するため除菌薬が胃粘膜に到達しにくくなり,除菌成功率が大きく下がります.
除菌治療中は飲酒・喫煙は控えるようにしましょう.

ピロリ菌が消えたらもう胃カメラは受けなくてもいいですか?

いいえ.
ピロリ菌が消えてもピロリ菌が胃粘膜に与えた影響がすぐに消えることはありません.
ピロリ菌の除菌成功して2年後や5年後,10年後に胃がんが発生した方も実際にいますので,除菌後も定期的に胃の検査は受けるようにしてください.

ピロリ菌が消えてまた出てくることはありますか?

はい.ただしそれほど多くはありません.
少なくとも日本国内の飲料水はきれいですので,普通に生活していて再感染することは稀と考えられます.

再感染と診断された方のほとんどが,実は除菌確認の検査がきちんと実施できていなかった(=ピロリ菌が完全に消えてはいなかった)と考えられます.その原因はいくつか考えられますが,もっとも大きいのは除菌治療後に早い段階で除菌確認検査を実施していることです.

当院では偽陰性(ピロリ菌がいるのに陰性と判断してしまうこと)を極力避けるために,除菌薬服用後に通常より長く期間を空けて除菌確認検査を実施しています

子供にピロリ菌をうつしてしまっていないか心配です.どうしたらいいですか?

除菌治療の際には多量の抗生剤を服用する必要がありますので,ピロリ菌陽性が判明しても(副作用の観点から)除菌治療を実施するのは通常成人してからになります.

『心配でそれまで待てない』という場合は,検便によるピロリ菌検査(便中抗原検査)を実施していますのでご相談ください.

ピロリ菌の検査や除菌治療は受けたいけど,胃カメラは受けたくありません.どうすればいいですか?

ピロリ菌に感染すると一定の確率で胃潰瘍や胃がんに罹患しますので,当院では自覚症状がなくても胃の検査を受けることをお勧めしています.(胃カメラで胃炎などがあればピロリ菌検査は保険適用になります)

また胃カメラを希望されない場合も,自費診療でよければピロリ菌検査を実施することが可能です.
詳細は当院受診時にお問い合わせください

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